2013年5月27日月曜日

シーズンエンド


後1週間でバレエ団のシーズンが終わります。
まだ5公演残っているけど、夏の間アパートを空けるので大掃除をしたり、スーツケースを出して帰国の準備をしていると、もう終わりなんだな・・と実感します。





















ようやく山を越えた野外公演。あと5公演・・・。
ステージの周りが自然公園なので砂は飛んでくるし、虫は飛んでるし、風はきついし、リノリュームは日に日にベトベトになり踊りにくいしで、きれいな写真からは想像できないほど大変なことになっています。。

この3週間の野外公演、チケットーセールスはかなり好評で毎晩ほぼ満席です。去年と今年と2年連続で企画されてる公演だけど、来年はないみたい。
私の個人的な感想は、いくら好評でもやっぱりバレエはちゃんとした劇場でやるもので、お客さんもバレエを観た。とは言えないと思います。

本番を毎日繰り返していると、後半になってくるとさすがにみんな疲れてきて、少しづつ踊りのクオリティーが落ちていきます。野外ステージなので普段のステージとは条件が違いリノリュームのつなぎ目に凹凸があったり、やけに滑るところがあったり、余計に注意しないといけない点がたくさんあるし、強い風に長時間ほぼ裸のような衣装でさらされていると集中力も落ちてきます。
みんな笑顔で踊ってるけど、内心は「キャー虫が近寄ってくる!!」とか思ってたりするので、お客さんには本当に失礼な話なんですが・・・。

でもバレエは全神経を集中して自分の最高の状態をつくりだして初めて 良い舞台になると思うので、そういう努力をダンサーができる最低限のコンディションは必要だと思います。
今回の経験で完全にアンチ・野外公演な私になってしまったけど、アメリカのバレエ団では結構普通だったりするようです。。。
でもなんといっても後5回。。頑張ります。



2013年5月15日水曜日

野外公演



 このシーズン最後のプロダクションは野外での公演です。
確かシーズン始まりもフリーチケットでパークショーを行いましたが、今回は違います。
大きな特設ステージの前にはテーブルとイスのセットが何組も設置されてあり、チケットを買っていただいたお客さんはその席で、ワインなどドリンクサービス着きでバレエを鑑賞できるようになっています。
何とも斬新な、、でもこれがかなり評判が良いようで、去年試しにやってみると バレエ団にとってはかなりの収益だったそう。そして、今年も期待に応え、2年目の長期野外公演期間に入りました。

ドレスリハーサル含め約20回の舞台で3週間。これからシーズン最終日の6月1日まで、ほぼ毎晩公演になります。
2週間前のAll Balanchineに比べたら内容も、体力的にもかなり楽だけど、野外・・というのが。。ダンサーにとっては厳しいです・・パークショーの時と同じく、リノリューム(バレエ用のフロア)の状態や、ライトに集まってくる虫たち・・ いつも気にしなくていいことが気になって仕方なくなるのです。

去年のパークショーではバランシンのセレナーデをやったのですが、芝生にマットを敷いて、星や月をバックにバレエを見るなんて最高だ(しかもフリーで・・)。って思ってくれたお客さんもたくさんおられたと思います。
でも、舞台上では、ポーズで立っている時にある女の子の衣装のスカートに大きなカナブンがとまり離れなくなって内心パニックになったり、笑いをこらえたり、大変でした。






後15回、何が起こるのか。。。


2013年5月7日火曜日

パフォーマンスウィーク


今週、バレエ団はAll Balanchine という公演をフェニックスのシンフォニーホールで4日間5公演上演しました。
バレエアリゾナの芸術監督イブ・アンダーソン氏は、デンマークロイヤルバレエ、ニューヨークシティバレエでプリンシパルを務めた素晴らしい経歴の持ち主です。
彼はバランシンスタイルというバレエ界に新しいスタイルを造った著名な振付家ジョージ・バランシンに見初められた数少ないダンサーの一人だそうで、数多くのバランシン作品をステージすることを認可された世界中で数少ないコーチ(Balanchine Repetiteurと呼びます)なのです。

だからバレエアリゾナでは毎年バランシン作品のみを上演するAll Balanchineというプログラムが組まれます。 








一番上の写真の「セレナーデ」は女性ダンサーにとって体力的に本当にきつい作品になっています。
 体力的には、クラシックバレエのグランパドドゥを2回続けて踊った感じに似てるような。
20分ぐらいの長さですが、これはプリンシパルよりもコールドバレエのほうが体力的にきつい
作品だと確信してます。
衣装は決まって水色のレオタードに足首までの長いチュールがついていて、そのチュールがとても薄いのでステージに立ち照明を浴びると足が透けて見え、とても綺麗です。


 動画はうちのカンパニーではありませんが、セレナーデの一番最初のシーン。
客席で見ると、静かな始まりがとても幻想的で、ここからダンサーたちが次々と様々な配列で形を変えていく姿があまりにも非現実的で感動されるお客さんも多いと思います。

でも、この始まりのシーン、ダンサーにとっては一番緊張したりします。私は今週ステージリハーサルも含め、計8回舞台で踊ったけど、最終公演でも緊張してました。

このバレエは、幕が開くと六番ポジションで右手を挙げみんな同じ方向を向いて立っているポーズで始まるのですが、それが意外と難しい。
普段トウシューズで立ったり回ったりしている者が両足で立つのが難しい。といってもウソのようだけど、幕が開いた瞬間広大な暗闇と客席が視界に入り、自分たちは青い薄暗い照明で照らされているため、一瞬焦点が定まらなくなります。このポーズでしばらく立っていないといけないので、その間真っ直ぐ立っているつもりでも自分が左右に揺れているような感覚に陥ります。絶対あってはいけないことですが。。。感覚としては、片足で両目を閉じバランスをとっている感じ。。

この感覚が緊張を呼び「ちょっと待って・・自分は今両足で立つことすら震えてる、この後ダブルピルエット(回転のテクニック)が4回続けてあるのに、出来るのか?!」って嫌な予想をしたりしてしまいます。
 でも無事、大きなミスやアクシデントもなくすべての公演を終えることが出来ました。




9か月前、アメリカに渡って、今まで学んできたことや、経験したことは全くここでは通用しないんじゃないか、って自信喪失したときがたくさんあったけど、 思い出してみればブカレストやプラハでも心が歪むような苦しい経験もたくさんあったように思います。

でも今振り返って考えてみると、その苦い経験のことを今思い出したからと言って、トラウマでもなければ痛くも痒くもない。
それはその時に、逃げ道を作らず、その問題と付き合ったからだと思います。
結局、自分のキャリアの良し悪しが決まるのは、その瞬間、瞬間ではなく、キャリアを終えてみて、「良いバレエ人生だったな」って思えたらすべてOKなんだと思います。

しばらくアメリカのバレエは私には合わない。才能ある人にはいくら努力しても敵わない。と腐った気持ちになってたけど、落ちてもまた自分のやりたい役が踊れるように頑張ってみようと思います。